都市、郊外、地方に限らず、今、日本では空き店舗や空き家、空きビルが増えている。相鉄線弥生台駅も横浜郊外の住宅地として開発された場所だった。駅前の元クリーニング店の空き店舗では、PMKを導入した、1日単位でお店を持てるポップアップスペース「TRY BOX」という少し変わった取り組みが行われている。仕掛け人のオンデザインパートナーズ西大條晶子さん、取り組みを行う相鉄いずみ野線エリアマネジメントのご担当者(以下、相鉄担当者)さんに話を聞いた。
―こんにちは、西大條さん、相鉄広報さん。まず、弥生台エリアについて教えてください。
(相鉄担当者)こんにちは、なんか緊張しますねw。よろしくおねがいします。弥生台駅のある相鉄いずみ野線は、神奈川県横浜市旭区の二俣川駅と神奈川県藤沢市の湘南台駅を結んでいます。弥生台エリアは、1976年の鉄道開業に合わせて沿線の住宅地が開発されました。現在は、住宅街の高齢化が進んでおり、大きな病院も近くにあるため、健康や癒やしをテーマにサービス付き高齢者向け住宅も整備されてきています。また、ファミリー世帯も一定数流入があります。
―TRY BOXの企画について教えてください。どのように生まれたのですか?
(西大條)コロナ前の時期になりますが、当時私たちは定期的にマルシェを企画しており、日常的に販売ができる場所の需要が見えてきました。そんな時、相鉄ライフの区画で元々クリーニング屋さんの区画が空いていたため、そこを活用することになりました。そして、プレイスメイキングキットを導入し、一日単位で店舗もてる企画「TRYBOX」を提案しました。「TRYBOX」をスタートしてから、約2年が経過しますが、おおよそ毎月20日程度は周辺住民の方々を中心に利用いただいています。
―ポップアップスペースがまちや場所をどう変えましたか?
(西大條)周辺に住んでいる高齢者にポップアップスペースが浸透していて、「今日はなに売ってるの〜。」なんていう会話もあり、初めて出店する人々が集客できなかったらどうしようという不安を和ませてくれるシーンがあったりします。一方で出店者の中には高齢者の見守り活動をしていこうという方もいて、高齢者が多いエリアのコミュニティづくりにいいアプローチとなっていると思います。また、駅前の商業施設の区画ということで、住民の生活動線の中にTRYBOXがあることが、多くの出会いのきっかけになっていていいなあと思います。
―プレイスメイキングキットを使用してみての感想を教えて下さい。
(相鉄担当者)おしゃれですよね。空間がおしゃれだなって思えることは重要なんです。
(西大條)あと可変性があるのがいいです。出店者によってレイアウトを変えられるため、出店者が自分の個性を出すことができます。毎回見ていると、使う人によって個性の立ち現れかたが違い、空間が変わっていくのが魅力的です。
(相鉄担当者)最初にPMKが紙でできていると聞いて、短いスパンで交換することを覚悟していましたが、思ったより耐久性がありましたよね。結構ハードに使ってますが、交換無しで2年もってますもんね。
―今後の展開について教えてください。
(相鉄担当者)この活動を通じて、郊外住宅地の駅前でチャレンジする人々が予想以上に多く驚きました。出店のハードルを下げることで、そこで起きるアクティビティや出会いはお金では測れないものがあるように感じています。今後は、ポップアップスペースなどのチャレンジができる場所づくりを沿線に広げていきたいと考えています。
(西大條)「TRYBOX」という、自身でオープンできる場が近所にあることで、利用者の方々同士が日常的に集い他のプロジェクトを立ち上げたり、新しい組織が生まれたりするシーンを何度も見てきました。私は物事の始まりの瞬間に出会えて嬉しいですし、まちにとってもすごく明るい話だと思っています。今後の展開が楽しみです。
(写真:野呂美帆)